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最高裁判所第二小法廷 昭和33年(オ)688号 判決 1961年11月24日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人井上登、同田中治彦、同毛受信雄、同内田八三郎の上告理由について。

原審が証拠上適法に確定した事実によれば、訴外西台合金株式会社(以下西台合金と略称)が被上告人主張の原判示(1)ないし(5)の約束手形を振出し、右五通の約束手形の第一裏書欄を空白にし、それぞれ支払拒絶証書作成義務を免除の上、第三裏書の被裏書人を被上告人にして(1)(2)の手形については、第二裏書を訴外株式会社昭和機械工作所(以下昭和機械と略称)、第三裏書を上告人がなし、(3)ないし(5)の手形については第二裏書を上告人、第三裏書を昭和機械がして、いずれも振出人の西台合金の手を通じて被上告人に交付せられたこと、その後被上告人において右各手形の第一裏書欄に裏書記入をしたこと、上告人の本件手形の裏書は、手形振出人である西台合金の手形上の債務を保証する意味においてせられたものであるというのである。しかして挙示の証拠によれば右の事実認定ができるものというべきであつて、証拠に基かないということはできない。そしてまた上告人の本件手形の裏書の趣旨についての上告人と被上告人との合意は、被上告人からの申出、上告人からの承諾共に川島(承諾については更に荒牧)を介して、同人等を伝達機関としてせられたものであるとの原審認定の事実も本件において証拠上肯認できる、またかかる事実は、いわゆる間接事実に属するものであつて、当事者の主張がないからといつて裁判所が認定できないわけのものではない(上告人も、原審において上告人が本件各手形に裏書をするに当つては、西台合金の川島を通じて、被上告人との間に、被上告人は上告人に裏書としての責任を負わせないとの約定があつた旨主張したことは原判決の事実摘示のとおりである)。そして上告人(控訴人)の本件手形の裏書は、手形振出人である西台合金の手形上の債務を保証する趣旨のものである以上、被上告人(被控訴人)は本件手形において上告人に対する関係では、手形上の後者であると共に前者にも当り、戻裏書を受けた関係にあるものではあるが、その前者としては上告人に対し、上告人の裏書が前記の趣旨のものであるとの人的事由を対抗しうる結果、後者としての遡及権を失わないものであつて、上告人は被上告人の本件遡及権の行使を拒み得ないものと解すべきであるとした原審の判断は正当である。論旨は採用できない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 藤田八郎 裁判官 池田 克 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一 裁判官 山田作之助)

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